アウトドアプロデューサーに聞く!「自然体験」を「学び」に変えるおふろ時間
子どもの脳と心の成長を育むことで注目を集める「外育」。
外遊びやアウトドアなどの自然体験が、子どもの成長に良いことはなんとなく知っているけれど、実際子どもの成長にどう役立つのか。また親としてどのような関わりができるのか。
アウトドアプロデューサーであり1児のパパでもある長谷部雅一さんに、親として知っておきたい、自然体験の極意を聞きました。
クリエイティビティは、幼少期の自然体験によって育まれる
IQや学力テストなど数値では測れない「非認知能力(=主体性や物事をやり遂げる力など)」が、未来を生きる子どもたちに必要である、といわれて久しいですが、 その力はどうすれば身につくのか?その鍵は「外育」にあるかもしれません。
「外育」とは自然体験を通して遊びながら学ぶ子育てのこと。長谷部さんは「自然の中では非認知能力がオートマチックに育まれる」と話します。
自然体験の中で、子どもはどう成長するのでしょうか。
人間の”意図”とは?
長谷部さん
たとえば、おもちゃやゲーム、公園の遊具もそうですけど、これらには『こうやって遊ぶもの(遊び方や完成形)』『こういう発達を促すもの』など、何かしら大人が設定した目的や狙いがありますよね。
そうすると、子どもはどうなるか。目的や狙いの範囲内、予想できる範疇でしか成長せず、枠を超えたクリエイティビティが育ちにくいんです。
長谷部さん
一方、自然の中の遊びは、『公園で気になる葉っぱを見つける⇒葉っぱの下には何がいるだろうと想像(予測)する⇒裏返したら虫を発見⇒虫についていったら何が起こるだろうと想像(予測)する⇒虫についていったら穴を発見して…』というように、ストーリーがどんどん展開し、遊びが変容していく。
子どもの非認知能力は、脳と心を動かしながら『想像(予測)と体験(確認)』を繰り返す没頭体験によって育まれていきます。
子どもを伸ばす親の関わり方。本当の意味の子ども目線とは
言われてみれば、子どもが夢中になるものの多くは、虫や植物など自然の中にあるような気がします。では、子どもの自然体験に親はどう関わればよいのでしょうか。
長谷部さん
本当の意味で子どもの目線に立つことで、見える世界が変わってくるかもしれません。
大人って経験があるからこそ、『多分こうだろう』と知ったつもりになってしまうんです。でも実際は予測と乖離している場合も多い。
経験はアップデートさせていかないといけないし、そのためには”今この瞬間”というのを、子どもと一緒に体験し共有するのが大切だと思います。
遊び方がわからない場合は、しゃがんでみよう
子ども目線に立つための、具体的な方法やポイントはありますか?
長谷部さん
ひとつは、『子どもと同じ歩幅、同じスピードで歩いてみること』。歩くスピードがゆっくりになると景色もゆっくり流れ、目に入る情報量が変わります。
もうひとつは、『子どもの隣にしゃがんだりして、子どもと同じ目線になってみること』。
自分を子どもサイズにリサイズして考えると、地面との距離、木の高さ、段差の大きさなど、物の見え方が変わってきますよ。
なるほど…。そもそも「何をして遊べばいいかわからない」という場合はどうしたらいいでしょう。
長谷部さん
これは私もよく聞かれるのですが、何して遊びたいかは、子どもに聞くのが一番早いです。
もし2人ともお手上げの場合は、その場にしゃがんでみる(目線を変えてみる)、木の近くに行ってみる、あるいは公園の際に行ってみるとよいかもしれません。
都内の公園でも、木の幹に蝶の卵やサナギがいたり、フチの植え込みにトカゲやクモがいたり、きっと何か発見できすはずです。
大人が介入しない、子どもだけのコミュニティも大切
長谷部さん
子どもの成長においては、親子で遊ぶだけでなく、大人が介入しない子どもだけの時間を持つことも大切です。
木に登りたい、石の上から飛び降りてみよう、ここに水をかけたらどうなるかな?など、子どもが『本当にやりたいこと』は、大人が制限しがちなことに隠れていたりしますから。
もちろん、ケガや事故には十分気をつかなければいけないし、見極めは必要ですけどね。
長谷部さん
あと、幼児期から小学校くらいまでの時期って、ある程度の“残虐性”を出せるだけ出しといた方がいいんですよね。
“残虐性”とはどういうことでしょう?
長谷部さん
虫を踏み潰したり、トンボやバッタの羽をむしったり、子どもは時に残酷な行動を平気ですることがありますよね。
このような虫を殺す行為は、大人から見れば残酷に見えますが、実は命の大切さに気づくための大事なステップでもあります。
でも親がいっしょだと、注意せざるを得なかったりしますよね。そういった意味でも、子どもだけのコミュニティはとても大切なんですよ。
決して生き物を殺すことを勧めているわけではないですが、こういった倫理観は誰かに押し付けられるものではなく、少しずつ自分で気づいていくものだと思うんです。
「体験」を「学び」に変えるアウトプット
自然体験の極意をたっぷりお話いただきましたが、積み上げてきた体験を学びに変えるコツはありますか?
長谷部さん
体験はそのまま経験(学び)になるわけではなく、体験の中で五感をフルに使い、何かを感じ取ってはじめて経験(学び)になります。
ひとつの体験を通して、どれだけ多くのことを学び取れるかの方が、むしろ人間形成においては重要です。
長谷部さん
体験を経験(学び)に変化させるために有効なのが、体験をアウトプットすること。
楽しかったこと、うれしかったこと、びっくりしたこと、不思議に思ったこと、なぜそう思ったのかなど、体験を振り返り言葉にすることで、経験(学び)に落とし込まれます。
体験はアウトプットによって血肉となるのですね。でも、振り返りの時間を作るって、なかなか難しそう…。
長谷部さん
そうですよね。振り返りの時間をわざわざ作るのは大変ですし、忙しい子育ての中であまり現実的じゃないですよね。なので、うちはお風呂の時間をアウトプットタイムにしてます。お風呂は必ず入りますからね。
長谷部さん
自然体験のワークショップではよく、素の自分に戻るために裸足になってもらうことがありますが、裸になるというのは究極的に自然な状態。人間は自然に近い状態になると、本音を言いやすくなります。お風呂は親子の絆も深まりやすい場所だと思いますよ。
親子のコミニュケーションにお風呂時間が最適!
「裸の付き合い」という言葉があるように、お風呂だと普段言いずらいことも話せてしまったりしますよね。 お風呂は親子の大切なコミュニケーションタイム。外でいっぱい遊んだあとは、子どもの体験を経験(学び)に落とし込む時間として、お風呂をうまく活用してみてはいかがでしょうか。
お風呂でリラックスするには、副交感神経(心身を休息させるための神経)が優位に働く38~40℃のぬるめがおすすめ。逆にシャキッとしたいときは、交感神経(心身を活動させるための神経)が優位に働く40℃以上の熱めがおすすめです。ぜひ参考にしてみてくださいね。
長谷部さん
外遊びやアウトドアなどの自然体験は、子どもの『なんでだろう?』や『もっと知りたい!』『やってみたい!』という好奇心を無限に広げてくれます。
なぜなら、自然には人間の”意図”がないからです。