産後の疲れた心と身体に、お風呂でストレスケア
産後うつは誰もがかかりうる身近な病気。産後うつの原因や症状、セルフチェックの方法、産後うつを防ぐにはどうすればいいのか?産婦人科医の清水先生に解説してもらいました。ママだけじゃなくパパにも知ってほしい、産後のストレスケアについてもご紹介します。
産後は心が不安定になりやすい
産後は母体に急激な変化が生じるため、心身ともに不安定になりやすい状態。産後に起こりがちな不調やトラブルには、どのようなものがあるのでしょうか?
「産後うつ」は「マタニティブルーズ」とは異なる”心の病気”
清水先生
気分の落ち込みに加え、『理由もなく涙が出てくる』『赤ちゃんが、かわいいと思えない』『母親失格だと感じる』などの症状があるときは『産後うつ』かもしれません。早めにクリニックを受診することをおすすめします。
産後うつ病をスクリーニング(うつ病の疑いがある人を見つける)のためによく使われているのは、「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」。こちらは乳幼児健診などでも活用されているそうです。
- 笑うことができたし、物事のおかしい面もわかった。
- 物事を楽しみにして待った。
- 物事が悪くいったとき、自分を不必要に責めた。
- はっきりした理由もないのに不安になったり、心配した。
- はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた。
- することがたくさんあって大変だった。
- 不幸せなので、眠りにくかった。
- 悲しくなったり、惨めになった。
- 不幸せなので、泣けてきた。
- 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた。
出典:周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド 2017 初版/日本周産期メンタルヘルス学会
※エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)は、自分で産後うつ病かどうかを判断するためでなく、あくまで産後うつ病のスクリーニングのために、医療機関や健康保険センターなどの保健福祉施設で行うものですが、参考までにご紹介します。
10人に1人が「産後うつ」を発症。なりやすい人とは?
日本産婦人科医会のデータによると、約10%(10人に1人)が産後うつを発症。産後うつは決して珍しいものではなく、誰でもなり得る病気です。
清水先生
ただ本人に自覚がなかったり、あるいは『他のお母さんはみんな、ちゃんとやっているのだから…』と受診を躊躇う場合も多いので、ママの不調や変化を感じたら、パートナーや家族、周りの方が受診をすすめることも大切です。
一般的に産後うつになりやすい人は、責任感が強い、完璧主義、心配性…などの傾向があるとされていますが、その他、睡眠不足や疲れ、ストレスも大きく関係しています。
清水先生
『不妊治療』『若年・高年出産』『双胎』『帝王切開術』も、妊娠・出産に対する不安が持続し産後うつの要因となるので、あらかじめ知っておくとよいでしょう。
夫婦のどちらかがメンタル不調になると、もう一方も不調に陥る可能性が高くなる傾向があるので注意が必要です。
清水先生
近年は徐々にですが、自治体の育児支援なども整いつつあります。『おかしいかも』と思ったらまず周囲に助けを求めましょう。産後うつを防ぐためには、パートナーや家族、友人、社会を『頼る力』も大切です。
それから『自分だけの時間を持つ』こと。散歩やマッサージ、一人でお風呂に入るだけでも全然違いますよ。
産後ケアに役立つ、お風呂の効果
産後1~3週間は、ゆっくり体を回復させることが最優先。徐々に元の生活に体を慣らしていくことが重要です。
産後4週間には1カ月健診があり、医師からOKが出れば家事や入浴などが可能になりますよね。「久しぶりにお風呂でリラックスしたい」「湯船につかって温まりたい」と思う方もいるでしょう。
ここからは、産後ケアに役立つお風呂効果についてお伝えします。
温熱効果で自律神経をコントロール
湯船につかると体温が上がって血流が良くなります。それにより、新陳代謝が高まり疲労回復に効果が。自律神経をコントロールする作用もあります。
浮力効果でリラックス
湯船では浮力が働き、体重が普段の10分の1の重さに。そのため、体重を支えている筋肉や関節を休ませることができ、体全体の緊張がほぐれます。
水圧効果で血流が促進
水圧で血流やリンパの流れが良くなり、産後のむくみ解消にも役立ちます。授乳で胸が張っている場合、お風呂で温まりながらマッサージするのも効果的。
産後のお風呂は大事なリラックスタイム!
清水先生
ママがゆっくりお風呂に入るためには、パパや同居の家族の協力が必要不可欠。お風呂がママの産後ケアに役立つことは、パパにこそ知ってほしいですね。
ママが健康で過ごすことが、赤ちゃんにとっても家族にとっても一番大切。ぜひ家族に協力してもらってお風呂の時間をつくってくださいね。
清水先生
身体的症状としては『頭痛・肩こり・腰痛・むくみ・尿漏れ・便秘・蕁麻疹や皮膚の痒み・脱毛・動悸・ほてり・めまい・虫歯・歯肉炎』などがあります。
また、産後は妊娠中に増加した女性ホルモンが急激に低下。その影響により精神的にも不安定になりやすく、『不眠・不安・イライラ・抑うつ・食欲不振』などの症状が表れます。
このような、産後一時的(産後2週間ほどの間)に起こる情緒不安定な状態を「マタニティブルーズ」といいますが、これをきっかけに「産後うつ」になることもあるので注意が必要です。