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【専門家に聞く】お風呂×子育てのお悩み相談室「ひとりお風呂デビューはいつ?」など

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子育てに忙しい毎日の中で「ひとりお風呂デビューさせるのはいつから?」「子どもがシャンプーや水を怖がって洗えない」「お風呂で長時間遊んで出てこなくなる」など、お風呂に関する悩みを抱えるママやパパは多いのではないでしょうか。

今回の記事では、そんな子どものお風呂に関する悩みに対して、保育の現場で40年以上子どもたちを見つめ続けてきた保育士の井桁容子さんに、お風呂の時間を親子の充実した時間にするための工夫や考え方について教えていただきました。

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お風呂は「親子の心地よい心の情景」を作る場所

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まず、子どもの成長とお風呂の関係についておしえてください。そもそも子どもの健やかな成長のためには、お風呂はどのような場所であるべきなのでしょうか?

井桁さん

お風呂は体をきれいにしてくれて、心もメンテナンスできる心地よい場所であることが子どもに伝えられたらいいと思います。 そのためには、お風呂は、親子で一緒にほっとできるリラックした空間になっていることが大事です。 ママやパパは子どもを毎日お風呂に入れるのは、大変だと感じるかもしれません。でも子どもは、ママ・パパとすごす時間や大人のリラックスした姿を通して、お風呂が体とこころをメンテナンスする気持ち良い場所であると学んでいきます。 何かと忙しい日々ではありますが、1日のうちのほんの20分ほどの時間だけでも親子で心をほぐして過ごす時間にと心がけてみてはいかがでしょうか。

お風呂では、親子でいっしょにリラックスするのが大事ということですね。

井桁さん

リラックスしたからこそ思い出せること、考えられることがたくさんあります。「実は今日、お友だちを叩いちゃったんだ」と子どもが心の中に抱えているものを吐露することがあるかもしれません。「お散歩楽しかったね」「今日はあれが楽しかったね」とその日のできごとを子どもと一緒にお風呂の中で振り返るのもいいでしょう。 そのときの時間や場所、情景や感情が含まれる記憶を「エピソード記憶」といい、人間だけにできる記憶と言われていますが、お風呂はまさに、親子の心地よい情景のエピソード記憶が宿る場所になります。 お風呂が、子どもにとって自分の気持ちを受け止めてもらえて気持ちがすっきりした場所として記憶されたら、お風呂で心を整理することが習慣になり、それは思春期になっても大人になっても、その子を助けてくれると思います。 前提として、お風呂は「親子の心地よい情景を作る場所」と考えましょう。

お悩み1. 子どものひとりお風呂デビューはいつから?

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お泊まり保育の前やお友だちがひとりでお風呂に入っていると聞くと、「うちの子もそろそろひとりでお風呂に入るべき?」と思うことがあります。何歳くらいからひとりで入れるべきなのでしょうか?

井桁さん

そんなに焦らなくてもいいと思いますよ。 子どもが小学生になって、ひとりで入りたい意思が出てきたタイミングでいいのです。幼児にとっては、数センチのお湯でも溺れるリスクがあります。子どもの命が第一優先ですし、子どもがひとりでお風呂に入っているあいだずっと見守るとなると、結局大人はなにもできないし大変ですよね。 一緒にお風呂に入っているときに、ママから見て子どもが自分で体も洗えて泡も流せることを確認できて、その上で子ども自身に「ひとりで入りたい」という意思が出てきてからでも遅くはありません。ひとりお風呂デビューは、小学校中学年くらいでいいと思います。心配しなくても「ひとりで入りたい」と言い出すようになりますよ。

子どもに「自分のことは自分でできるようにさせなければ」「自立させなければ」と考えるのですが…。

井桁さん

子育てをがんばるあまりそう考えるママたちもたくさんいるようですが、自立という言葉の意味を今一度考えてみましょう。自立とは、なんでもひとりでできることではなく、困ったときに助けてと言えることだと心理学的には言われています。「自分ができないのをダメなことだと思わずに、人を信頼して助けを求めることができる人」が自立した人、ということです。 ママが子どもを自立させなきゃと育て急ぐ気持ちがあり子どもから離れていこうとすると、子どもはそれが不安になってママにしがみつくので、結果的に自立が遅くなることもあります。 子どもに自分でやらせてみることはいいのですが、無理にやらせるのではなく、子どものやりたいという気持ちを育てることが大切です。 ですので、ママやパパから「もうひとりでお風呂に入れるようになりなさい」と時期を決めるのではなく、子どもの気持ちが育つのを待つべきだと考えます。

お悩み2. シャンプーや水が苦手なので克服させたいです

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うちの子はシャンプーや体を洗うことが苦手なようです。どうしたらできるようになりますか。

井桁さん

シャンプーや水が苦手という子もそれぞれに理由があるはずですので、それを知ることから始めましょう。 ママは子どもの成長を気にかけるあまり「いつになったらできるようになるの?」と心配になると思いますが、子どもの成長や発達は、日々できることが増えるというような右肩上がりの曲線ではなく、階段状でしかも行きつ戻りつしながらある日突然一段上がる、そんなイメージのもので、その子によって異なります。まずは恐怖心や苦手な理由を尋ねながら少しずつ取り払ってあげてください。 例えば水が顔にかかるのがこわいと感じる子も、ママとお風呂で楽しく遊んでいるうちに少しずつ慣れていくことがあります。

楽しくシャンプーや水に慣れるためにできる工夫はありますか?

井桁さん

嫌なことを減らす工夫をしてあげましょう。たとえばこのようなことができますね。

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なぜ苦手なのかを親がしっかりと見極めて、それに合わせた工夫をすることが大事なのですね。

井桁さん

子どもがこわがっていることを無理にがんばらせると、もっと苦手になってしまいます。それよりもなぜこわいのか、どうしたらこわくなくなるのかを一緒に考えてあげる方が、大人への信頼感にもつながります。 ママの役割は、子どもができるようになるために教えることではありません。子どもが困っていることを誰よりも理解し、解決するための方法を一緒に考えてあげる存在でいてあげてください。

お悩み3. 子どもがお風呂からなかなか上がろうとしません

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子どもが湯船で遊んでなかなかお風呂から出てくれません。1時間以上出てこないこともあり、さすがに困ってしまいます…。

井桁さん

大人にとってはただ遊んでいるように見えても、子どもは遊びを通して学んでいます。 お風呂で遊ぶ子どもをよく観察して、「なにが楽しいの?」と聞いて、まずは子どもがなにに夢中になっているのかを理解しましょう。 大人には当たり前のことでも、子どもにとってお風呂には不思議がいっぱい。好奇心を刺激され、自分が知りたいことを探究している可能性もあります。水の流れや音を楽しんでいる、泡の形状を観察するなど、科学的・物理的関心があるのかもしれません。 自然が身近な場所なら川や海で体験することができますが、家庭の中でお風呂は唯一、体ぜんぶで水を感じられる場所。子どもにとっては遊びと学びがはっきり分かれているのではなく、遊びの中から学ぶことがたくさんあるのです。 とはいえ、けじめはつけさせたいですよね。まずは、なにが楽しいのか、なぜお風呂遊びをやめるのが嫌なのか、子どもの気持ちをよく聞いて「共感」したその次に、なぜやめないといけないのかを「説明」してあげましょう。

具体的にどんな声かけをしたらいいのでしょうか。

井桁さん

「これ以上お風呂で遊んでいると風邪ひくよ」「手がふやけてぶよぶよになってしまったね」とできるだけ具体的に説明してあげてください。「あとこのくらいでやめておこうね」とやめ時を予告して提案するのもいいですね。 水の観察や泡の実験に夢中になっている子には「博士、そろそろおしまいにしないと、次の日の実験ができなくなってしまいますよ」とユーモアを交えて伝えてあげると、尊重された気がして悪い気がしないことで、受け入れてくれたりします。(笑) 子どもが「自分の気持ちを認めてもらえた」と感じ、さらに「なぜやめたほうがいいのか」が具体的に理解できると、子どもなりに納得してお風呂から出ることができると思います。

「まずは共感、その次に説明」が大切なのですね。

井桁さん

この積み重ねを「共感の積立貯金」と呼んでいます。 普段から子どもに共感しようとするママには「共感貯金」が貯まっていくので、どうしても忙しくて余裕がなく「今日は時間がない」という時に、日ごろの分かってもらえたことの信頼が活かされて子どもがすんなり納得することが多いです。普段たっぷり共感してもらって満足した経験があるからです。 逆にこの「共感貯金」が足りていないと、子どもがママの言うことを受け入れてくれないことがあるかもしれません。少し余裕のある時に「共感貯金」を積み立てておくと、いい形でママに返ってきますよ。子どもは、結構義理堅いです。(笑)

お悩み4.お風呂ではどうコミュニケーションをとると良いの?

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親子で一緒にお風呂に入ることは、たとえば公園遊びとはどこが違うのですか?

井桁さん

もちろん、公園遊びも親子の大切な時間のひとつですが、お風呂の時間だけは子どもがリラックスしたママやパパの姿を見ることができます。そして、ママやパパが他のことに気を取られることなく自分だけに向き合ってくれる、うれしい時間でもあります。 ですので、普段忙しくしていても、お風呂の時間だけは心をそこに置いて、子どもとしっかり向き合う時間にするといいですね。 また、お風呂を「気持ちいい状態を保証してくれる場所」として声かけをしましょう。たとえば、「心のとげとげも流してもらってうれしいね」「ケンカしても水に流そう」など、お風呂に入ることによって体だけでなく心もすっきりさせられる心地よさを子どもに伝えられたらいいと思います。

最初におっしゃっていた「親子の心地よい情景」を作るということですね。

井桁さん

長い人生の中で、親子で一緒にお風呂に入れる時期は限られています。あっというまに一緒に入られなくなる時がきます。 その時まで、毎日のお風呂の時間で親子の心地よい情景を作っておくと、子どもが大きくなった時に「お母さん・お父さん、あんなこともしてくれたな」と、心の支えになることもあります。また、お風呂の時間を楽しみリラックスする大人の姿から、日常を大切にすることが伝わると思います。 お風呂を「ひとりで入れるように」「体が洗えるように」など子どもに何かできるようにさせる場所ではなく、親子のかけがえのない時間をすごす場所にしてもらえたらと思います。

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